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コラム-病名変更 「精神分裂病」から「総合失調症」-

病名変更

 精神障害のひとつに「精神分裂病」と呼ばれてきた病気があります。その病名が65年目にして「統合失調症」に変更されることになりました。これは去る1月19日、日本精神神経学会が承認したもので、正式には今年8月、横浜市で開かれる世界精神医学会で発表されることになります。
 精神分裂病は1908年、スイスの医学者が提唱した概念で、当時、「人格のまとまりが失われる障害」という考えから、ドイツ語で精神の分列状態を意味する「シゾフレニー」と名付けられました。
 実際の症状は、現実にないものが見えたり聞こえたりする幻覚、そのようなものを思い込んで訂正がきかなくなる妄想、現実生活への無関心などが主なものです。発病率は約0.8%とされ、国内には約70万人の患者さんがおり、うち約20万人は入院中といわれます。脳内の神経伝達物質の不均衡が原因説として有力で、それに応じた治療薬の開発により、半数以上が社会復帰できるようになりました。
 精神分裂病という呼び名は、1937年に同学会で用語統一の思案として公表されて以来、国内に定着しています。これは当時取り入れた原語をそのまま訳したものです。
 ところが一方で、「精神の分裂」というこの言葉の響きが医学的に不適切であることや、偏見や差別を助長するなどの理由から、病名見直しの機運が生じるようになりました。実際、患者さんやその家族が就労や結婚で経験した苦労は計り知れません。こうした状況で93年、全国の精神障害者の家族会が同学会に正式に病名変更を要望したのです。
 同学会は5年にわたる議論の末、2000年に変更方針を打ち出し、新しい名称の候補を募りました。最終的に絞られたのが、英語名をカタカナ表記した「スキゾフレニア」、この病気の確立に係わる医学者名を組み合わせた「クレペリン・ブロイラー症候群」、原語を再訳した「統合失調症」の3語です。これらの中から昨年10月、一般公募で新名称が選ばれました。全体で約2400の応募数の4割が統合失調症を支持し、他の二つを大きく上回ったのです。
 精神科の場合、専門家が創り出した用語が日常化し、一般大衆の中で限度を超えて一人歩きすることが少なくありません。今回の病名変更は、精神障害への偏見をなくすという世界共通の課題に向けた日本独自の取り組みとして意義深いものです。この新名称がこれから正しいかたちで社会へ根ざしていくためには一般市民の深い理解が重要となるでしょう。

「仙台経済界」2002年 3-4月号掲載

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